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なにもかも理解した顔で課長が席を立ちコンサル室を出て行ってしまった。
課長が不在となったコンサル室で、顧客インバウンド着信の音が響き渡る。インカムヘッドホンをしている女の子達も黙々とコンサル業務を行ってくれている中、やはり『サイテー』、『ひどい』、『いつかこうなると思った』なんて囁きがちらちら聞こえてきた。
散々な日だった。
その後、課長は戻ってきても何事もなかった顔でデスクで業務を続けているだけだった。
その日のコンサル受付時間が終了し受付用電話回線が遮断される。
「徹平、今日はもう帰って良いからな」
定時に帰れるだなんて僕には珍しいことだった。それでも僕は課長の言葉に甘え、すぐさま荷物をまとめて退出した。
課長の気遣いに感謝していた。夕方のこの時間までなんとか平静を保つのに精一杯――。本当はあの後、会社なんてすぐに飛び出してしまいたかった。
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