シーズン3 【 新婚 】*疫病神がコウノトリ*

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「私があんな男と関わっていたばかりに。真面目にやっている徹平君にこんなこと。私って、わたしって」  いつになくわんわんと美佳子が泣く。それだけ取り乱しているということ。あの年下男はいつもこうして妻の心を掻き乱す、今でも。そんな落ち着きをなくしている妻が最後に叫んだ。 「私って徹平君の疫病神なのかも!」  ブチッと切れた音が僕には聞こえてしまう。 「疫病神だなんて言うな!」  初めて僕は怒鳴った。会社でも怒鳴ったことなどない。美佳子に妻にもこれが初めてだった。  美佳子の涙が止まっていた。  お前が疫病神だというなら、僕はそんな疫病神にバカみたいに惚れていたことになる。そんな疫病神をあの男からニコニコしながら受け取ったバカ男。そう思うだけで怒りが込み上げた。  そんなんじゃない。僕はその前からずっと前から美佳子が好きだったんだ。でも僕にチャンスはなかった。チャンスが来たのは彼女が傷ついた時。そこをつけいるように彼女と親しくなった男? そんな縁なのか。それだけの縁なのか。お前が疫病神の自分と結婚したというなら……。お前は自分が落ち目であるのを解って、なにもかも諦めて僕を選んだっていうのか?
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