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「仕方がないだろう。自分でも避けられている理由、自覚しているはずだよね」
「あれ、違うの。誤解されている。けど、いちいちこっちから釈明するのもおかしな話なんだもの」
「んん? 誤解? 釈明? それが出来ない?」
僕が知らない何かが目の前で繰り広げられる予感。でも彼女は自分から『聞いて欲しい』とばかりに振ってきたのに、やはり言い難いことなのか口ごもっている。
仕様がないなあ。じゃあ、ここはひとつ。僕自身は嫌なんだけれど、いつもやっているみたいに開く時は開くのに閉じたら頑固になっちゃう彼女達特有の口を開けてもらおうかと深呼吸。
「僕が知っているのは。安永さんが彼と別れたって話なんだけど。年下のね、一階にいる営業のね、入社三年目のヤツと」
「あんな奴とつきあっていたわけじゃないからっ」
彼女が嫌悪感を露わに吠えるように言い切った。
それを聞いて僕は「噂はガセだったのか」と、初めて噂に違和感を持った。
「あのさ、安永さんがそいつにスッゲー惚れているみたいな噂があったんだけど」
「なんなのよ、それ! でも否定しない。だって彼に誘われて何度かドライブに行ったのは確かなんだもの……」
「え、そうなのかよ」
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