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あれから課長も何事もなかったように僕には件については話すこともなくなった。その代わり、通路で挨拶を交わす営業部長の様子がちょっといつもと違うことには気が付いていた。
「沖田君と若社長。仕事でのいざこざなんて建前。女性問題でもつれていたみたいよ」
情報網は天下一品の女性達。その強力な情報収集力に僕は感心しきり、目を丸くするばかり。
「言ったでしょ。これは『若いからと気を緩めた軽いノリでのおつきあい』の成れの果てよ。接待でゴルフとかは良くある話だけど、ことあるごとに、バーベキュー大会にキャンプ、飲み会とかってまるで合コンみたいにやっていたみたいよ。その中で社長と親しい女性と一悶着あって、それで若社長がご立腹。彼の営業態度に仕事の話がぜんぶ信じられなくなったんだって。しかも、沖田君。『また』相手の女の子をその気にさせて結局は知らん顔だって」
さりげなく織り込まれた『また』という一言。そして僕は淡々と聞きながらも心の中で舌打ちをしていた。『あの男。女の子は自分本位に利用しているだけ。きっと美佳子の時も――』と。
「指導不足、管理不行き届きで営業部長も厳重注意されたらしいわよ」
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