1917人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなの。大変ね……。そうだ。なにかお祝いしたいなあ。私、辛い時期あったでしょ。あの時彼女は新人だったからこっちの大人の事情なんて分からなかったんだけど、だからこそ明るく話し相手をしてくれて、すごく助かった記憶があるんだよね。私が辞める時も素直に泣いてくれて……。あれから徹平君を通じての挨拶ぐらいしか出来なかったけど、その気持ち渡したいな」
「いいよ、お祝いだって僕が渡してあげるよ。そうだ。僕も選ぶのをつきあうから夫妻からってことにしようか」
「本当? じゃあ、今度のお休みに一緒に探しに行こう」
二人で頷きあうと、その間で黙々と食事をしている娘が両親の顔を交互に見ている。
「なあに、梨佳ちゃん」
「なんだよ、梨佳」
「パパとママは、どっちが『プロポーズ』したの。やっぱりパパだよね」
四歳のくせに。『プロポーズ』なんて言葉、どこで覚えてきたんだと目を丸くしていると、妻の美佳子が大笑い。
「きゃー、どうしよう。録画していたドラマを観ている時、覚えちゃったんだね」
女らしい美佳子に育てられた娘は、やはり『おませ』だった。
最初のコメントを投稿しよう!