1917人が本棚に入れています
本棚に追加
「一緒に観るドラマは子供が観ても大丈夫なものにしておけよ」
「わかっているわよ。エッチなシーンがあるドラマなんて……」
と言って、美佳子がハッと口を閉ざす。娘の顔を確かめた後、何故か僕の顔を見て真っ赤になっていた。
「まあ、ドラマなんてそんなものでしょ」
「そうだな。そんなもんだろ」
言い分ける妻がちょっとおかしくて、僕はつい頬を緩めてしまった。益々妻の顔が耳まで赤くなる。
夫の目がないところで、ちょっと大人ドラマを一人で楽しむ専業主婦。そんな姿を垣間見せてしまって恥ずかしがっている。
結婚して五年。もう恥も外聞もなくありのままの姿を見せて生活をしているかと思ったが、まだ妻にそんなところがあると知って僕はなんだか……。
「えっちてなに」
娘がさっそく、気になったことをかいつまんで聞いてきたので、僕と妻は揃って笑いあった。
―◆・◆・◆・◆・◆―
午後の中休み前。美佳子の後輩だった高原愛ちゃんをそっと休憩室へと呼び出す。夫妻揃ってのお祝いを渡すと彼女もとても喜んでくれた。
「係長には大変お世話になりました。いつも丁寧に親身に助けてくださって。ほんと、どんなにお客様に怒鳴られても心強かったです」
最初のコメントを投稿しよう!