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「ふうん。係長の奥さんの気持ちだったんだ」
『まあね』と答えると、彼女が腕を組んで黙ってしまう。
「分かりました。ちゃんとやりますから。あーあ、私、アウトバウンド大嫌い」
不満そうに吐き捨てながらも彼女はヘッドホンを頭に装着し、お客様応対に戻っていく。
アウトバウンドは、こちらから顧客に電話連絡をする業務。僕の会社では、契約後のアフターサービス的な問い合わせや、契約内容について変更はないかなど定期的に尋ねる連絡をしている。それとは別に、契約内容の販促つまりセールスをすることもあるので、会社の名を言えばすぐさま電話を切られることもある。なので女の子達はお客から目的を持ってコンタクトをしてくれるインバウンドよりも嫌がっていた。
それでも業務に戻れば、彼女はハキハキとした物言いで顧客との対話をスムーズに進め、テキパキと件数をこなしてくれる。
まあ、ハキハキ、テキパキは、彼女らしいとも言えた。特に『ハキハキ』。なんと言っても彼女は、美佳子を『寝取った女』とハッキリと言い放つことが出来た程なのだから。
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