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いつものように休憩室へ行くと、おばちゃんがやってきた。
「徹平君もいま休憩なの」
「田窪さんも、今から?」
いつかここで僕の汚れたシャツを拭いてくれたおばちゃん、田窪さん。子供が大学進学で家を出て行ったのを機に、社員としてフルタイム勤務へと移行。すっかりベテランでどの女の子からも一目置かれていた。
その田窪さんが、誰も伴わずに僕のところへとやってくる。
「てっちゃん。愛ちゃんにお祝いあげていたでしょ」
「え、ええ。まずかったですかね。人目を避けて渡したつもりだったんですけど」
「まずくはないけど、彼女『落合さん』にだけは見られたくなかったわねえ」
ああ、やっぱりそこですか。と、僕は項垂れた。
「目ざとくてびっくりしているんですよ、僕だって。まるで休憩室まで追いかけてこられたみたいで」
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