シーズン4 【 木婚式 】 前編 *しよう、今夜、しよう*

11/21
前へ
/281ページ
次へ
 いつものように休憩室へ行くと、おばちゃんがやってきた。 「徹平君もいま休憩なの」 「田窪さんも、今から?」  いつかここで僕の汚れたシャツを拭いてくれたおばちゃん、田窪さん。子供が大学進学で家を出て行ったのを機に、社員としてフルタイム勤務へと移行。すっかりベテランでどの女の子からも一目置かれていた。  その田窪さんが、誰も伴わずに僕のところへとやってくる。 「てっちゃん。愛ちゃんにお祝いあげていたでしょ」 「え、ええ。まずかったですかね。人目を避けて渡したつもりだったんですけど」 「まずくはないけど、彼女『落合さん』にだけは見られたくなかったわねえ」  ああ、やっぱりそこですか。と、僕は項垂れた。 「目ざとくてびっくりしているんですよ、僕だって。まるで休憩室まで追いかけてこられたみたいで」
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1918人が本棚に入れています
本棚に追加