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「愛ちゃんが無事に退職出来るまで、気を付けた方がいいよ」
「勿論です。気を付けておきます」
おばちゃん田窪さんからのミニ情報はいつも僕を助けてくれる。
僕の身の回りを案じてくれるアドバイスをしてくれるだけでなく、その『落合さん』についてさらに一言。
「彼女も人のこと言えないみたいよー。営業に新しく配属されてきた年下の男性にアプローチしているってさあ」
『ええ!?』と僕は目を点にする。
「それってあれってそれですよねっ」
言いたいことを明確に言えずにこんな言葉しかでてこなかったのだ。『それ』って――『彼女が年下の営業マンを狙っている』ことは、『あれ』――『うちの奥さんがはまった落とし穴』に、『それなんですよね』――『バカにした本人の落合さんも同じことをしようとしているってことなんですよね?』と聞きたい!
だけれど僕は美佳子が年下の彼に一時でも熱をあげて夢中になり弄ばれたことをどうしても口に出来ずにいた。そんな僕の慌て振りを田窪さんが笑った。
「ま、そういうことよ」
そして田窪さんも曖昧に流してくれたが、がっちりと意思疎通で僕が言いたいこと聞きたいことを分かってくれたようだった。
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