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「彼、最初から私をただの餌にしか思っていなかったとわかったから。きっとエッチをしたらポイだったと思う」
「聞いた話では、同じ歳ぐらいの彼女が彼に出来て、安永さんは捨てられたと思われているけど」
「うー、わかってる~。そう思われているだろうということも、毎日、肌で感じているっ」
ハンカチを握りしめた美佳子が、また悔しそうに力んだ顔になる。
「いったいどういうことなんだよ?」
「ねえ、佐川君。年上と年下が喧嘩したらどうすればいいと思う? それともどうすることが多いと思う?」
聞かれて僕も考える。思い浮かんだのは『人によると思う』。そのまま彼女に言った。
「だよね。佐川君はそう言うと思った」
彼女ががっかりしている。それを見て、僕は……職場で女性の宥め役であることを忘れ、一歩踏み込んでみた。
「人によると思うけど。そうだなあ。安永さんだったら、自分が反論するのは『大人げない』と思って彼の好きなように言わせておく。嵐が過ぎるのを待つ。いま、その段階ってこと?」
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