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「……わかりました。申し訳ありません。本当はこんなことお願いしてはいけないと分かって……しかも残業中に……」
「気にするなよ。その点では嫁さんの姿みてきたから、察するよ」
「有り難うございます。少し気が楽になりました」
やっと彼らしいといえそうな、凛々しい笑顔を見せてくれた。
彼が去り、僕は溜め息をこぼした。
若い青年の魅力とはなんなのだろう。手に届きそうだから、女として少し頑張ってしまうのだろうか。大人になった自分の魅力で、若い二十代の女性と勝負する。まだいける勝負が出来る。自信がないところは『男の言葉』で前に進む。『美佳子さんって綺麗ですよね』、『全然、三十歳にはみえないよ』、『俺、年上好みなんですよ』、『若い女より、経験がある女性の方が魅力的だな』。僕の頭の中、あの沖田がにやけた顔でそんな言葉を囁いている。
この憎々しさ。そしてそんな男の言葉に頬を染めて、女としての艶を醸しだし、ついにはまだまだ眩しいばかりの青年へと手を伸ばしてしまう。
「はあ、だめだ。もうだめだ!」
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