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「どうしたんだ。なにがあったんだよ」
ひとまず現場監督である僕が尋ねると、周りの女の子達がとても困った顔をしている。そんな中、立ちはだかっている落合さんがいつもの気強さで言い放った。
「彼女が応対したお客様から電話があって、高原さんに頼んだのにちっとも連絡がないということで、逆に私が散々怒鳴られたんですよ。ものすごく、ひたすら怒鳴られて謝ったんですよ」
彼女がいちいち愛ちゃんに突っかかるその心理状態など、このコンサル室の誰もが知るところ。小さなことを大袈裟にして騒いで、自分が定めた相手がどれだけ悪いかを主張して自分の正義を訴える――。今の彼女はそんな人と誰もが思っている。僕だって……。
しかしそんな係長の心情を敏感に察したのか、彼女から先手を打ってきた。
「だって係長、みてくださいよこれ!」
なんの躊躇いもなく、落合さんは愛ちゃんのデスクへと飛びつき、マウスを操作。愛ちゃんデスクのモニターに件の顧客ファイルを開いて見せた。
念のため、僕も眺める。そのファイルの片隅にあるフリーメモ欄。そこに確かに確かに、落合さんが言ったとおり、愛ちゃんの落ち度となる応対メモが残されていた。
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