シーズン4 【 木婚式 】 後編 *コルセンは魔女を生む*

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 僕は俯いて立っている愛ちゃんを見下ろした。 「高原さん、これには連絡するはずの日付が残されているけど」 「はい、その……」  明らかに愛ちゃんの落ち度だった。これもまあ、あってはいけないが、沢山の顧客を相手にしていると誰でも一度や二度はやってしまうミス、『約束忘れ』。  約束してから数日が経ってしまうため、きちんと本人が覚えておくか、自分で自信がないなら上司に報告して管理してもらうかをしないと今回のようにすっぽり忘れてしまうこともままあること。愛ちゃんほどの手際をみせるようになると、彼女がカレンダーにメモをして応対するようになる。……はずだったのだが、愛ちゃんも今回はすっかり忘れてしまっていたようだった。 「高原さんと約束した時間から二時間も待っていたそうですよ。身動きも出来ず、無駄な時間を過ごしたと大変ご立腹で。私が延々と愚痴とか説教を二十分ほど、聞かされたんだから」 「それで。そのお客様は納得してくれたのか」  哀しい性で。僕の咄嗟の心配はそこに向かう。現場のいざこざよりもお客様。いちオペレーターで収まらなければ、監督の僕か室長の課長が直にお詫びの連絡をしなくてはならないから、すぐに対処へ動かなくてはならない。 ※現在のコールセンターでは、管理職SVに受けた時点でエスカレーションをして報告、管理職側で対応を管理してくれるセンターがほとんどだと思います
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