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「納得して頂けました。その代わり、明日のこの時間に私でも高原さんでもなく『上の人から連絡をして欲しい』とのことです。今日はもう用事があってでかけるからじっくり話せないそうです」
落合さんが差し出したメモを、『わかった。僕が連絡する』と受け取った。
「あの、係長。申し訳ありませんでした」
神妙に深々と頭を下げて詫びる愛ちゃん。
「迂闊だったね。以後気を付けて」
彼女達が失敗した時、いつも呟く一言。それも『僕は怒っている、失望している』と渋い顔を見せて。彼女達に小さなことでも反省してもらうために、そうしている。そこで反省してくれたならそれでいい。
それにしても。最後の最後、愛ちゃんでも気が緩んでしまっていたのだろうか。珍しいことだった。
さて。もういいだろう? 明日、この顧客とどのように対話するか考えておかねばとメモ片手に僕のデスクに戻ろうとすると、周りの女の子達がホッとした笑顔を揃えていた。僕がそれで済ませたからだろう。というか、いつもこうして済ませている。余程のことでなければ。
「あーあ、やっぱり係長は高原さんに甘いんですね」
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