シーズン1 【 独身 】*僕はいわゆる『いい人』、つねに対象外*

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 今まで僕が見てきた彼女は、そんな女性。だから全てが事実と確定しない『噂』で終わっているのだと――。僕の主観かもしれないけど、これが僕が好きな彼女だった。  だけど彼女は目を見開いて唖然とした顔で僕を見ていた。潤んでいた黒い目も乾いてしまっていた。  そして、僕の見解はズバリ合っていたようだった。   ―◆・◆・◆・◆・◆―    僕と美佳子は同期入社。入社して十数年になる。三年前から『顧客コンサルティングサービス』という部署で業務を共にしている。主に女性達が電話接客にて顧客と相談したり声を聞いたりすることが多く、課長と僕がそれを管理しているという形の部署だった。  僕は課長補佐の主任。つまり顧客と接客する彼女達の面倒を課長の代わりに見る。すると彼女達が困った時に、手助けをする機会が多く、さらに女性特有の諍いを察知して業務に支障がないように運ばなくてはならないので、おのずと『宥め役』になってしまうのだった。  彼女達の愚痴聞きも多い。彼女達が顧客に叱りとばされていたら、僕が交代して代わりに叱られる。そうして彼女達を援護する。それが僕の役目でもあった。
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