シーズン4 【 木婚式 】 後編 *コルセンは魔女を生む*

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 事は収まり張りつめていた空気も穏やかに緩んだというのに。また女の子達の顔が一気に凍り付いたのを僕は見た。 「なにが以後気をつけて、ですか。高原さんに以後なんてないじゃないですか。結婚退職するんだから。もう適当でもいい気分になっているんですよ。だから係長も甘く見過ごして」  僕は振り返り、彼女を見据えた。 「僕はいつもと同じだけれど」 「そうですか? どうせ辞める人だから怒らなくてもいいとか思っているんでしょ」  というか。僕が彼女達に怒鳴って叱りつけたことなど一度もない。なのに『そこが係長のいけないところなんだと』言いたげな落合さんの目が鋭く向かってくる。 「係長が甘いから、彼女も気が緩んだんですよ。私は高原さんのミスで二十分もタイムロスしたんですよ」 「お互い様じゃないか。落合さんのミスを他のコンサルオペレーターの誰かがフォローしてくれていることだってあるんだから」 「それでも『すっぽかし』は大きなミスじゃないですか!」  意地でも絡む彼女の真意はなんなのか。僕が皆の目の前で『なんてことをしてくれたんだ』と愛ちゃんに叱責することなのか。
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