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自分の正義の刀が、自分自身に返ってくる。三十の女は引っ込んでいろ。もう魅力なんてないんだから勘違いしていないで引っ込んでいろ。昔、誰かを刺した言葉が自分に跳ね返ってきた瞬間――。
ついに落合さんが『うわああん』と泣き出してしまった。それにも誰もがギョッとした顔を揃える。もうどこにも逃げ場がなくなった子供が泣き出したような光景だった。
周囲は、ピーピーと鳴り響く席ばかり。
泣きわめく三十女。呆然としているコールオペレーター達。放置されているコール音。あちらからもこちらからも、ピー、ピー、ピーと呼んでいる。
呆然としたままの僕は……。
目にとまったヘッドセットを無意識に取っていた。
目の前の着信が響くデスク。そこへぼうっとしたまま座り込む。
頭にヘッドセット。手にはマウス。カーソルは『着信』ボタンへ。すべて無意識、身体が覚えている動作。
「お電話、有り難うございます。コンサルティングサービスの佐川と申します。はい、はい……。かしこまりました。只今、お客様のご契約内容を確認させて頂きますのでお名前とお電話番号を……」
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