シーズン1 【 独身 】*僕はいわゆる『いい人』、つねに対象外*

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 故に。僕はいわゆる『いい人』と言われるようになる。  なので彼女達から頼られることは良くあること、でもそれは単に僕の仕事であるだけ。だからといってそれが出来て優秀かと言えばそうでもない。ただただ単にそこにいて、目の前に現れたことをこなして回転させていくしか能がない男だと自覚している。人と争うことが好きではない、だからってやられるのも嫌だ。ひたすら回避して火の粉が飛んでこないよう、必死に身をかわしてきた方だと思う。  なので女性達がどのようなことで怒ったり泣いたり、どんなことで男達にとばっちりがやってきそうかもなんとなくわかるようになってしまう。  怒っている彼女達を、泣いている彼女達を、僕はひたすら宥め慰め労り、職務のレールにもどす。それを課長が望んでいることも良く分かっているつもりだった。  だから女性達は言う『佐川さんはいい人』。でもだからってうだつが上がらない僕を恋人にしようだなんて女性はいない。そう、彼女達もよくわかっている。『彼は私達の慰め役でしかないのだ』と。  女性の『割り切り』て、すごいなと思う。
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