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泣いていたのは愛ちゃんだけじゃない。落合さんも。そんな彼女を外へと連れ出してくれたのは田窪さん。本来は僕がすべきことなのだが、コール受付ロボットになってしまった僕が、だからこそどれだけ取り乱しているか田窪さんだけが上手く察してくれたようだった。だから僕の代わりに――。
そして僕の心も泣いていた。僕がまとめてきたコンサル室がこんなにぐちゃぐちゃになったのも初めてだったし……。そして……美佳子のことも。
―◆・◆・◆・◆・◆―
二十分ほどインバウンドコールを受け付け、僕も愛ちゃんも落ち着いたので交代する。
「高原さん、僕は大丈夫だから。でも有り難うね」
「いえ、余計なこと。辞める前に騒いでしまって申し訳ありませんでした」
「気にしないで。それより、残り少し。しっかりやって」
解りました――と、彼女がやっと笑顔になって受け付け業務に戻っていった。
さて。気を取り直して。田窪さんが代わりに宥めてくれている落合さんをなんとかしなくては。
彼女との因縁は忘れ、僕は『係長』に戻ろうと必死になる。
女の子達が休憩室に使っているミーティング室へと向かった。
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