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そこの窓際で、まだぐずぐすしている落合さんと彼女の濡れた顔を拭いている田窪さんが向かい合っていた。
「田窪さん、有り難うございました」
僕の姿を知った落合さんが、ゆっくりと立ち上がった。
「係長、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げた落合さん。そしていつまでも頭を上げない。いつになく殊勝な様子の彼女だが、今日の彼女は心から詫びてくれているように見えた。
「佐川君。彼女にも言い分があってね」
田窪さんの助け船。僕もそっと頷く。
「分かっています。だからもういいよ。落合さん」
「私から佐川君に話しておくから。落合さん、もう戻りなさい」
僕でなく田窪さんが、落合さんの背中を押しコンサル室へと返した。
「まだ佐川君とは面と向かって話すほど、素直にはなれないみたいだから、私から伝えてくれるならいいっていろいろ話してくれたよ」
「そうでしたか」
僕は落合さんが座っていた椅子に腰をかけ、田窪さんと向かい合った。
「彼女も悪いけどね。でも私は同じ女として、落合さんの気持ち、分からないんでもないんだよね」
「好きな男が少しでも他の女に余所見をしていたら、疑ってかかるってことですか」
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