1916人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
田窪さんはとても驚いた顔で僕を見た。そして……なんだかとても困った顔で溜め息。
「だよね。男も同じかもね。てっちゃんも、本当のところ落合さんの気持ちが誰よりも分かっているかもしれないね」
僕は黙った。その通りだったから。
「当時、彼女はまだ若かったし。女は好きな男を信じたいのよ。男が悪くても、相手の女を攻撃してしまうものなのよ。だから、あの時は美佳子ちゃんが一番憎かったのよ」
そして僕は、頷きもしなかった。既に僕の本心を察してくれていた田窪さんとだって、いつまでもこの話はぼかしておきたかった。僕自身も誰にも垣間見せたくない隠し持っていたい。今でもその意地が僕を黙らせている。
でも。それすらも分かってくれたのか田窪さんは僕の反応など無視して続けた。
「彼女ももうこれ以上言うことはないって。あそこまでやってしまったこと後悔していたし、自分でもどうしようもなくて、自分で自分がすごく嫌だったんだって。長い間、彼女も悪者扱いで辛い思いしてきたんだろうね。本当はあんな子になるはずなかったのかも。もちろんね、あの子の気の持ちようが悪かったんだけど」
最初のコメントを投稿しよう!