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第1話
「おめでとう」
…………。
「キミが無事に誕生して、良かったよ。何か調子の悪いところはないかな」
…………無い。
「そう、なら大丈夫ね」
…………。
「さて。キミにはこれから、たくさんの"想い"を届けてもらいます」
…………想い。
「詳細については、後ほど担当の者が説明します。ひとまず……キミのデータを入力させていただきます」
…………。
「キミの名前は?」
…………蒼緒。
「そう、蒼緒君。良い名前ね」
…………。
「はい、入力完了。それでは、おさらいをします」
…………。
「キミは、これから何をするんですか?」
……想いを、届ける。
「キミの名前は?」
……蒼緒。
「キミは"最期、どのように死にました"か?」
…………知らない。
「はい、充分です。それでは担当の者を呼びます、しばらくお待ちください」
…………。
「…………。
『繰り返す繰り返す、魂の輪廻の中』」
…………?
「『己の役目を見失わず、また想いの激流に飲み込まれず』」
…………??
「『どこまでも駆け抜け、心を満たしなさい』」
…………???
「ふふ、不思議そうな顔してるね。見送りの恒例文句みたいなものだから、気にしないで」
…………。
「さあ、キミのこれからを示す奴が来たよ。大変だろうけど、頑張ってね」
…………ありがとう。
「どういたしまして。
それではまた会いましょう、"想いを届ける者"よ」
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