来年の、夏の海

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 おっさんたちの運転するマイクロバスに揺られて海に出た。  海の家を借りるなんて言う豪勢な事は、貧乏な町内会にはできない。  ただマイクロバスをベースにして、小さい子供はそこで着替えをし、海に飛び出していく。  私や他の中学生のような歳かさの子供達は、海岸の公共の着替え場を借り、そこでスクール水着に着替える。  この日、私は夜更かしがたたったのか、車に酔ったのか、軽い頭痛がして気分が悪かった。  しかもマイクロバスの冷房がきつかったのか腹が痛い。 「どうした、マイクロバスで寝てるか」  引率の子供会役員の声がけに、私は大丈夫ですと笑顔を作り、海に向かった。 「あのな、無理すんな。寝てた方が良いと思うぞ」  小学校の頃マウスと呼ばれていた、ちびで年中鼻風邪をひき鼻汁をすすりあげたり、袖で拭っていた奴が話しかけてきた。  幼馴染、と言えるのだろうか。  子供人口の多くない町のこと、同い年なので保育園も小学校も、中学校も同じクラスだった。 『こいつも参加していたんだ……』  小さい頃からの抜群の存在感のなさで、海に子供らが散り改めて話しかけられるまで、そいつがいる事に全く気付かなかった。 「別に平気だよ。あんたこそ友達いないのによく一人で参加したね」 「うん、今年だけは参加したいなって思ったから……」 『マウス』は言葉をもぐもぐと口の中に飲み込み、急に踵を返してざぶざぶと波の間に入って行った。
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