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「その後、旅人は罰としてその全身に、生涯消えないタトゥーを彫られた。もちろん諸説あるけれど、それがタトゥーの発祥と言う人も多いんだ」
彫師の男の話に聞き入っていた若い女は、コクリと頷いた。
「その説によると、タトゥーは罰として体に刻まれるもの。それが原点なんだよ」
「そうなんだ……」女の顔が曇る。
「親からもらった大切な体。遠い未来で後悔して欲しくないから、施術希望者には必ずこの話をしてる。墨を入れるのを思い留まる人もいるし、より決意を固くする人もいる」
優しく微笑みかける男。女は少し考えた末、「わたし、後悔なんてしないから、タトゥー彫ってください!」と、胸を張った。
「オッケー。わかった。じゃあ、カーテンの向こうの施術室にベッドがあるから、横になって待ってて」
女は不安と期待が入り混じったような表情のまま、奥の施術室へと姿を消した。
「今日はちょっと熱っぽく語り過ぎちゃったかな」
壁掛け時計に目をやる男。
「おっ、もうこんな時間か。そろそろ日が暮れるな」
男は施術室のほうに目をやると、机の下に隠してあった頭巾を手に取った。
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