BL小説を置いてきた話

10/12
前へ
/12ページ
次へ
「それ、続きないの?」 「へっ?」 「いや、続き、読みたいじゃん」  続きなんて考えてなかったし、なにより人に見せるつもりで書いていなかったので、他の人から評価されるなんて思ってなかった。こんなとき、どう返答していいのかわからない。 「続きなんてないよ!」戸惑った僕はそう言い捨てると、岡野に背を向け、すぐにその場を去ろうとした。  しかし、そこで変なふうに身体をひねってしまい、階段の段を踏み損ねた。  僕の身体はバランスを崩し、落下する。 「アブねっ!」  岡野が右手を伸ばし、僕の腕を掴んだ。  そのまま片手でぐいと引き寄せ、僕の肩を左手でがっしりと掴む。 「気をつけろよ、長谷川ー」  岡野はそう言って笑った。  岡野の腕は力強く、肩に添えられた手は僕よりずっと大きかった。  顔も見ることができず「ありがとう」とだけ言うと僕はまた階段を下りる。  岡野がなにか言いかけていたが、僕は立ち止まらず、どんどんと降りていった。 「ノート、ちょっと汚しちゃった、ごめんなー!」  階段上から大きな声で言われたので、僕はびくっとなった。周りの誰かが聞いてないかときょろきょろしながら帰った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加