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「それ、続きないの?」
「へっ?」
「いや、続き、読みたいじゃん」
続きなんて考えてなかったし、なにより人に見せるつもりで書いていなかったので、他の人から評価されるなんて思ってなかった。こんなとき、どう返答していいのかわからない。
「続きなんてないよ!」戸惑った僕はそう言い捨てると、岡野に背を向け、すぐにその場を去ろうとした。
しかし、そこで変なふうに身体をひねってしまい、階段の段を踏み損ねた。
僕の身体はバランスを崩し、落下する。
「アブねっ!」
岡野が右手を伸ばし、僕の腕を掴んだ。
そのまま片手でぐいと引き寄せ、僕の肩を左手でがっしりと掴む。
「気をつけろよ、長谷川ー」
岡野はそう言って笑った。
岡野の腕は力強く、肩に添えられた手は僕よりずっと大きかった。
顔も見ることができず「ありがとう」とだけ言うと僕はまた階段を下りる。
岡野がなにか言いかけていたが、僕は立ち止まらず、どんどんと降りていった。
「ノート、ちょっと汚しちゃった、ごめんなー!」
階段上から大きな声で言われたので、僕はびくっとなった。周りの誰かが聞いてないかときょろきょろしながら帰った。
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