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ことが起こったのは、ホームルームを終えて、教室を出ようとしたときだ。
「長谷川」
後ろから急に僕を呼ぶ声があった。振り向くと、そこにいたのはバスケ部の岡野だ。
岡野はクラスの中でも活動的な人間で、帰宅部で非活動的人間である僕とは全然接点がない。
……と、岡野がかけているスポーツタイプのショルダーバッグの口から、見覚えのあるノートがのぞいていることに気づいた。
僕は驚きのあまり、心臓が止まるかと思った。
「あ……! あ……!」
僕が声も出せないで口をぱくぱくしていると、岡野が「これがさ……」と言いながらバッグのノートに手を伸ばそうとしたので思わず、
「ちょっ!」
と声を出して制した。クラスの皆の目がこちらに集まる。
僕は、思わず岡野の腕を掴んで引っ張っていた。とりあえず、階段のほうまで向かう。
岡野は「なんだよ、おい……」と戸惑っているが、とりあえず周りが気にならないところまで……と思い、僕は彼を屋上に続く階段のところまでぐいぐい引っ張って登っていった。
岡野の腕はたくましく、僕なんかの力じゃ全然随意に連れて行くことはできないはずなのだが、彼はおとなしくついてきてくれた。
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