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「はあ、はあ……」
階段を一気に上がったので僕は息が上がっていた。岡野は静かに僕が息を整えるのを待っている。
「それ……」
僕はかすかに手を震わせ、バッグからのぞくノートを指さす。
「これ、やっぱ長谷川の?」
言いながら岡野はノートをバッグから出した。
それは間違いなく、忘れていった僕のノートだった。
僕は目を見開いて、両手のひらを体の前で開いたままの体勢で立ち尽くしていた。
なんでそれを持っていった? とか、これを認めたらそのノートの中身を書いたのが僕だということがばれてしまう、だとか、色々なことを考えてフリーズしてしまったのだ。
すると岡野が「ちがうの?」と言いながら、ノートをパラパラとめくりだした。
「わーーーーーっ!」
僕は思わず叫んだ。
岡野は手を止めて僕のほうを見ると、
「やっぱお前のなんじゃん」と言って笑った。
自ら暴露する形になってしまった。もうこうなったら隠しても意味はない。僕は観念した。
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