BL小説を置いてきた話

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「そのノート……返して」  僕は岡野のほうを向くことができずに、手だけを伸ばした。 「ん」  岡野は簡単にこちらにノートをよこした。  僕はそれを奪い取るようにして手元にかき寄せる。  そして、恐ろしいが、ひとつ、確認しなければいけないことがある……。 「中、見た……?」  岡野はうなずく。  やっぱり見たのか。これの中身を……。 「あれ……なに? 小説なの?」  岡野が聞いてきた。  僕はぎこちなく首を縦に下ろした。 「俺、はじめてちゃんと小説っての読んだ気がするんだけどさ」  読んだの……? あれを? ちゃんと……?  僕は固まってしまった。  首の動きはさらにぎこちなく、錆びついたロボットのようにぎりぎりと岡野のほうを向く。音が鳴るんじゃないかと思うほどだった。 「あれ……男同士、だよな? 好きだって言ってたけど」
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