乃東生(なつかれくさしょうず)

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 雪が積もった、寒い朝。世間はクリスマスのお祝いで、どこかウキウキな感じ。だけど自分は、いつもにも増して緊張しながら、登校した。足元が悪く、歩くのに気を使っていたから。ううん、それだけじゃない。というか、わかってる。本当の緊張の原因は―あんな手紙、置くんじゃなかったかな。迷惑だよね。そんな風に、心が揺れ続けていたから。  ドキドキしながら覗いた机の中にあったのは、細かく、複雑に折りたたまれた、ノートの断片。ゆっくり、破らないように開いていく。指先が、震える。  1分後。その紙切れは、生涯の宝物になった。         *** 『ゆいさん  どうもありがとうございます。お返事を読んで、私にも、また新しい灯台が見つかるかもしれないと、思いました。少し時間がかかりそうですが、それでも、いつか来るであろうその日のことを想うと、少し元気が出ました。  はつみ』  そう書いた付箋を(何も書いていない付箋を上に貼って隠しておいた。一応…)貼ったけれど、翌朝、その付箋は無くなっていたけれど。返事はなかった。  やっぱり迷惑だった? それとも。 「…何かあったのかな」  口にしたら、急に不安な気持ちが押し寄せてきた。  明日から、冬休み。
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