家族

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家族

悪い人じゃない。 それは、何の救いにもならない。 私は、もう疲れた。 義母は、外面だけやたらと良い人だった。 ご近所さんにも、かかりつけのお医者さんにも評判の「かわいらしいおばあちゃん」。 だが、本当は違うのだ。 本当は、我の強い、憎たらしい人なのだ。 健康に気を遣って作った食事を、まずくて食えたもんじゃないと突き返す。 それならば、と栄養士監修の弁当を頼めば、愛情が足りない、辛気くさいと突き返す。 あげ始めたらきりがない。 特に、旦那が家にいない昼は地獄だ。 小間使いが何かのように私をこき使う。 やれこの棚を整理しろだの、押入からあれを探し出してこいだの。 全く急がないものばかりなのに、わざわざ家事の手を止めさせて急かすのだ。 義母の頼まれごとに時間をとられていて、夕飯が手抜きになってしまった時は、旦那にも息子にも申し訳なくて泣きたくなった。 旦那は、それでも文句は言わない。 言うのは、いつだって義母だけだ。 旦那に相談してみたこともある。 しかし、意味はなかった。 「母さんが? きっと寂しいんだよ。構ってあげてよ」 ご飯が作れない日があっても構わないし、なんなら買って帰るからさ、と言うばかりだ。そういうことじゃないのに。 おおらかで優しい旦那だが、こんな時には全く役に立たない。 旦那は市役所勤務、転勤なし。一人息子は小学生になり、元気に駆け回っている。義母と同居する実家は土地付きの一軒家。 恵まれている。それは分かっている。 でも私は、もう息がつまりそうだ。 神様、お願いです。 あの人を助けないでください。
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