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『菘ちゃんが嫁に来てくれて本当に嬉しかった。ひ孫にも会えた。ありがとう。』
これが私がフィンランドの病院で聞いたサチさんの最後の言葉だった。
あれから14年。私は41歳になっていた。夫の明日は43歳、そして私達の間には6歳の娘と4歳の息子がいる。
あの日、ハワイに戻る時に明日がついてきてくれて、夜には体のあちこちを重ね合わせたり、色々なことを語り合った。一秒でも体を離したくなく寝たくもなかった。
『お互い日本時間の午後3時になったら空を見上げよう。どんなに離れてても空は繋がってるから。』
明日から提案されて毎日空を見上げてはお互いを想い、ビデオ通話も毎日した。時間を見つけては短時間であってもお互いがいる国に会いに行ったり、日本で会ったりしていた。
明日は言葉が足りないところがあり、私は見たり聞いたりしたことを頭の中で飛躍させてしまうところがあるので、ぶつかってしまったこともあった。
離れているからこそ、曖昧な言葉ではなくはっきりと愛情や自分の考えを示さないといけないし、少しでも気になったことはその場で聞くべきなのだとわかってからは、私達の関係はよりよいものになっていった。
明日への気持ちが育つほど会いたい気持ちに押し潰されそうになったけれど、仕事に没頭することで紛らわす日々だった。
『手段を選ばない』などと言っていた忍くんだったけれど、やはり無理矢理触れてきたりするようなことはなかった。なんとなく、私と明日のことを少しずつ受け入れようとしてくれているようにも思えた。
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