僕と魔女の秘密の散歩

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 暑い暑い夏が終わったと思ったら、九月になったとたんにぐんと涼しくなった。  八月までは、半袖だと腕の皮膚がじりじり焼けるのが感じられて、とても外には出られなかった。僕と百合子さんは、極力涼しい部屋を探してさ迷って、日かげの方日かげの方に、移動しながら生きていた。  暑すぎて、朝と夕方にしか動けなかった。  僕の名前は都岡俊輔(とおかしゅんすけ)。これは、その暑い日々が終わってすぐの頃の話だ。  僕は少しでも涼しくなれるようにと、ひんやりした素材のシャツで過ごしていた。なのに百合子さんは「あつい、あつい」と言いながらも、長袖の黒のタートルネックと、ジーンズから服装を少しも変えるつもりが無い。  さすがに見ていてあんまり辛そうなので、 「百合子さん、もう少し涼しい服装にしたら?」 と言ってみたけれど、 「んー? これが私の服装と決まっているから……」 と、なんだかよく分からない事をむにゃむにゃ言いながら、ダイニングテーブルに顔を伏せて溶けていた。
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