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私は黒い画面をみつめ、キーボードに散った涙をハンカチで拭く。
分かっている。
売り上げが重要視されるインターネットゲームで、人気のなくなったゲームがサービス終了することは。
分かっている。
一度サービス終了したゲームが息を吹き返すことは、ほぼないことは。
それでも。
データを完全削除する瞬間は、一つの世界を抹消する瞬間は。
自分の半身がなくなるような気がするのだ。
「お疲れさま、マイラ」
「そう呼ばれると、涙が止まらなくなるじゃないでずがぁ!」
「お前の初プロジェクトだもんな、イーハトープ。俺は好きだったよ、のんびりまったり村生活」
「わたじも大好きでずっ! サ終しても大好きでずっ!」
私はティッシュで鼻をかみ、化粧室へ行くために立ち上がる。
古ぼけた壁に貼られた一枚のポスターが、目に入る。
【イーハトープ ~のんびりまったり村生活〜 ◯◯年△月×日15時配信開始!】
日本時間15時。
ゲーム内では、存在しない昼と夜の間。
私が製作に携わったゲーム・イーハトープは現実世界から消え、キャラクター達は黒い空へ消えていった。
(……ルッツ。ディグ。マイラ。私はずっと、覚えているからね。君達がいたことを、イーハトープの景色を、ずっと忘れないからね)
ポスターを穴が開くほどみつめ、私はゆっくりとポスターを剥がした。
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