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椥辻が部屋のドアを開ける。ブルーシートの上にココナが立っていた。下を向く彼女の視線の先には、長身の男性がうつ伏せで倒れている。
「ゆーた!」
駆け寄って屈む。背中はチェックのシャツが血でベトベトになり、首のまわりには大量の血が溜まっていた。肩を揺するが反応はない。
「トイレから戻ってきたら、血を流して死んでたの」
説明したココナの方を向く。
「栗木さんは?」
「栗木?」
「主催者です。一緒にトイレに行きましたよね?」
「……先に戻ったはずなんだけど」
「そうですか……」
「じゃあ、主催者がやったってこと?」
リホが尋ねると、椥辻は腰を上げた。
「ボクに練炭自殺を否定されて、このやり方に変えたんですかね」
そう言って首を傾げる。
「でも、他にいないし……まさか自殺?」
「いや、一ヶ所、背中に傷がありました。自分でやったとは考えにくいです」
「来てない人がいるんじゃなかった?」
ココナが言った。
「可能性だけ言い続けても仕方ないです。周辺の住人が後をつけてきて、やったのかもしれませんし」
椥辻は窓に足を向けた。手を掛けて横にスライドさせようとするが、鍵が掛かっていて動かない。窓を離れ、KKのボストンバッグの中を見るが、練炭が一箱入っているだけだった。
「どうする? 警察?」
「スマホ持ってるんですか?」
椥辻が聞き返すと、リホは首を横に振った。駅からここへ来るまでの道のりを思い出す。
「……人がいるって分かった家までは、十五分か二十分くらいはかかりそうですね」
「隣の部屋とかに隠れてるんじゃない?」
ココナが言い、リホが「犯人が?」と聞き返すと「そうよ」と答えた。リホが椥辻の方を向く。
「見に行く?」
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