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社員旅行殺人事件
「来週みんな大丈夫やんな?」
四人掛けのテーブル席に着き、ビールで乾杯を済ませると、社長の竹田孝助が聞いた。
「社員旅行ですよね?」
社内で一番年下の藤森舐瓜の質問に竹田社長が頷く。
「あいつも来るんっすか?」
続けて質問したのは、仕事のできる小野良春だった。
「……来るって言うてた」
小野の顔つきが強張り、隣にいるサバサバした性格の石田多江の表情も曇った。
「辞めてもらうのって、もう無理な感じなんっすか?」
「一回言うたけど、労基署に訴えるって言い出して……まあ、今は契約も取ってきてるしな」
「仕事してない証拠があればいいんじゃないの?」
石田が口を挟んだ。
「俺、後つけたことがあんだけど、その時パチンコしてやがった」
「その時の写真とか撮ってないの?」
「いや、そこまではしてねえ」
「まあ、前の話やし、今はちゃんと契約も取ってきてるしね」
竹田社長がなだめようとするが、小野は首を傾げた。
「それなんっすけど、なんか怪しくないっすか? キックバック払ってるとか……」
「経理上はそんなことないはずやけど」
竹田社長が首を傾げながら答えると、藤森が小野に視線を向けた。
「小野さん、ちょっと考えすぎじゃ……そんなに嫌いですか?」
「お前はあいつにいてほしいのか?」
「私は、そこまで……」
「俺はとにかく辞めてもらいてえ。あいつがいるだけでモチベーションが下がる」
「私も辞めてほしいわ。何回も断ってんのに、しつこく飲みに誘われるし」
「ていうか死んでもらう?」
三人の視線が小野に集まる。
「社員旅行って、今回もあの山ん中の小屋に泊まるんっすよね? 絶対バレないっすよ」
「小野さん、もう酔ってます?」
「……冗談だよ」
サラダが運ばれてきて、藤森が小皿に取り分け始めた。
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