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「殺された4号室の女性は間違って、ドアが同じ赤色の1号室に入ってしまったんです。部屋の番号は最初の受付で、口頭で伝えられただけですので色で覚えてたんでしょう。このホテルはシンメトリーな構造で、トイレのマークも赤と青にしとけばいいのに分かりにくく、シャワー室から出た後、右と左を勘違いしたんだと思います。本来なら間違ってたとしてもドアのロックは外れませんので、その時に気づいて問題はないのですが、カードキーの設定にミスがあって開いてしまった……」
「それで、間違って1号室に入ったとして、なんで殺されなけきゃいけないの?」
金田が不思議そうに尋ねた。
「見てしまったんだと思います」
「何を?」
「麻薬をやってるところをです」
「……根拠は?」
「ボクは麻薬をやってる人間を追ってまして、その中に大垣がいたんです」
「あんた、警察なの?」
「いえ、違います」
呆れた様子で金田が息を吐く。
「百歩譲ってそうだったとして、その後に大垣が死体を4号室に運んだってわけ?」
「そうです。自分のカードキーを使ったのか、殺された女性のを使ったのかは分かりませんけど」
「証拠あんの?」
「ベッドがほとんど乱れてませんでした」
「寝てるとこ襲ったんなら、抵抗できないわよ」
「髪が濡れてました。シャワーから戻って、すぐに寝ますか」
「疲れてたりしたら、すぐに寝ちゃうこともあるわよ。ベッドだって犯人がキレイに直したかもしれないし」
「皺になったシーツはそんな簡単に直せません」
「そんなの証拠になんないわよ」
「ボクの推理、合ってますよね?」
椥辻が目を向けたのは中国人の王だった。
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