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「……麻薬とか分かんないけど、大きな1号室の人が女の人おんぶして、4号室に入ってくのこの目で見た」
「あんたたち知り合いだったの?」
「いえ、違います。4号室から岡元さんと女性の話し声が聞こえたので、それが金田さんでなければ女性は王さんしかいません。王さんが隣の部屋の犯行に気づいたと思ったんです」
「そうだよ。一瞬だけど悲鳴のような声が聞こえたからな。怪しいと思って、ドアをちょっと開けて見てたんだ」
「……ズルいわ」
金田がつぶやいた。
「何がズルいんですか?」
「私の知らない情報で推理してるじゃない」
「推理ごっこしてるんじゃないですよ」
「いつから大垣が犯人だと思ってたの?」
「1号室の人が犯人だと思い始めたのは、フロントで4号室の人が亡くなったことを聞いて、殺された可能性を考えた時からです」
「マジでそんなに早かったの?」
「マジです。4号室が犯行現場だったら、ボクが何かしらの異変に気づくので」
「えらい自信ね」
「となると犯行現場は他の部屋、逆側の1から3号室のどこかになります。同じ色のドアがあるってのは最初から気になってたんで、試しに自分のカードキーを4号室で使ってみたら開いたってわけです。あと金田さんは犯行に気づいてないようでしたので、3号室だと思いました」
「なるほどね……でも、やっぱり証拠がないんじゃない?」
「証拠なんて要らないです。裁判じゃないですし」
「じゃあ、ここまで分かってて、なんで大垣を捕まえないの?」
金田が王の方を向くと「鈍いですね」と椥辻がつぶやいた。
「あんな大きい人、危ないよ。ホテルの人は警察呼ぶって言ってたのに、こんなことになって」
「じゃ、じゃあ、とにかく朝まで待つのね。ここで、こうやっていたら安全だし……」
「いえ、ボクもそう思ってたんですけど、相手は麻薬をやってるんで、いつおかしな行動に出るか分かりません。もし暴れ出したりしたら、全滅の可能性もあります。なので、ここは先手を打ちます」
「マジで言ってんの?」
「マジです。ボクも力には自信がないので、この四人では心配ですが、岡元さんに協力してもらえば何とかなるでしょう」
「でも……証拠ないのよね。違ったらどうすんの?」
「推理が100パーセント合ってる必要はありません。今はリスクを断つことが大事です。こういう理由で犯人だと考えましたって説明できるものが7割くらいあればいいんです。けど……」
「けど何?」
「ボクの推理は合ってます」
「どっからそんな自信が湧いてくんのよ!」
椥辻が飯原に目を向ける。体格を見る限り女性よりマシなくらいだ。どこまで協力してくれるのか不安になると、飯原が顔を上げた。
「……音が止まった」
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