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目を通した報告書を助手席に置き、町子がブレーキから足を離す。椥辻は包帯が巻かれた右手を胸に持ってきて、左に重心を寄せた。
「あなたがいながら二人も死ぬなんてね」
「……二人目は助けられたかもしれません。しゃべりすぎました」
警察の取り調べで、大垣は殺害した動機を自白した。夏目に麻薬をやっているところを見られ、椥辻の推理は当たっていた一方、岡元はうるさいという理解できないような理由で、消火器で殴り殺されたのだった。
会社の不手際で非難の矢面に立たされ、挙句の果てに命を落とす……これが岡元の人生の最期だった。結婚はしていたのか、子供はいたのかなどと考え、椥辻はひどく悲しくなった。
「……次の任務は何ですか?」
涙が出る前に話を変え、気を紛らわせようとする。
「次は、いろいろあるけど……」
「例えば」
「宗教施設の調査、外国人窃盗団の調査、違法ギャンブルの調査とか……」
「なるほど」
「その前にまずは骨にひびの入った手を治しなさい」
「分かりました」
空いた道路を車が軽快に走る。今回の任務も不本意な形で終わってしまった。
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