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ネット心中殺人事件
暗闇を抜け、最終電車が到着する。プラットホームに降りたのは4人。その中に椥辻もいた。一番後ろの車両に乗っていた椥辻は、3人の後を追うことになった。
無人の改札口を抜ける。くたびれた待合室に掲げられた円いアナログ時計に目を向けると、22時を回っていた。駅舎を出ると元気のない街灯が、建ち並ぶ店らしきものを照らしているが、どれも開いていない。
椥辻が行こうとしている道は、真っ暗で先が見えなかった。側にあった自動販売機で缶コーヒーを買う。いざという時には投げつけて武器になる。靴下に入れて振り回せば立派なものだ。
出てきた商品を取るために屈むと、横からスッと影が見えた。視界にパンプスとスラックスが入り、見上げるとチェックのシャツを着た背の高い男性がいた。
「心中の参加者ですか?」
長身の男性が尋ねてきた。
「そうだけど」
「俺もっす。ゆーたって言います」
「ゆうた?」
「ニックネームでは『う』を伸ばす棒にしてるんっすけど、どっちでもいいっす」
「じゃあ、ボクはきょーご」
「きょーごさんっすね。よろしくっす」
椥辻が缶コーヒーをポケットに入れ、足を進めると、ゆーたも隣に並んだ。
「大学生っすか?」
「いや、もう卒業してる。ゆーたは大学生?」
「そうっす。4回生っす」
会話をしながら暗闇の中を歩く。建ち並ぶ民家には明かりが点いていない。街灯は点いているものもあったが、ぼんやりしていたり、点滅していたりと、まともなのはなかった。
「どっちだろ」
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