ネット心中殺人事件

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 分かれ道を見て、ゆーたが言い、ポケットから折り畳まれた紙を取り出した。 「こっちだ」  椥辻が指を差すが、ゆーたは紙を広げていた。プリントアウトされた地図が載っていて、そこには太い線で道順も入っている。 「……そっちで大丈夫っす。合ってます」  確認して地図をポケットに戻した。 「覚えてるんっすね」 「これくらいは頭に入れる」  離れた道に明かりの点いた民家が並んでいる。道順が最短ルートではない理由に椥辻は気づいた。 「けっこう遠いっすね」 「ああ」  何メートル歩いたのか、何分歩いたのか分からない。スマホは解約してくるのがルールだった。 「あの……聞いていいっすか?」 「どうした?」 「俺、気持ち悪いっすか?」  視線を向けて姿を確かめるが、暗くてよく分からず、自動販売機の前で会った時のことを思い出した。 「違和感はある」 「性同一性障害ってやつで、心は女なんっすよ」 「もしかして、それが死ぬ理由?」 「……はい」 「中途半端だから、お互い気持ち悪く感じるんじゃないか? 下半身だけ女性の格好だし」 「……」 「テレビでもオネエ系っているだろ」 「テレビ見ないんっすよ」 「そっか……」  坂道に差し掛かる。曲がりくねっていたが、分かれ道はなく一本道で、いつの間にか林の中を進んでいた。 「変なこと聞いていいっすか?」 「さっきの質問も変だったけど」 「死のうって思ってます?」 「……」 「そうは見えないんっすけど」 「その質問、そのままゆーたに返すよ」 「……そういうもんかもしれないっすね」  一点の光が浮かんでいるのが見えた。道を進むにつれて近づき、ホタルなどではなくペンライトだと気づく。  木のない開けた場所に女性が二人、寄り添うように立っていた。彼女たちの後ろには一階建ての建物がある。椥辻たちが到着すると、一人が一歩前に出た。 「こんばんは。わたくしが主催者です」
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