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デザインのない白いワンピースに、銀色に染めた髪。老婆が死装束を纏っているように見えた。
「てことはKKさん?」
ゆーたが尋ねた。
「ニックネームに使っているのは、わたくしのイニシャルで栗木恵と申します」
椥辻たちも名前を言って挨拶を交わす。もう一人の女性はカーディガンを羽織り、目を合わさず黙っていた。
「こんばんは」
集まっていた4人が一斉に声のした方を向く。上はTシャツ、下は制服のスカートを履いた背の低い女子がいた。腕に掛けた小さなハンドバッグが膨らんでいる。椥辻たちと同じようにKKと挨拶を交わし、彼女はココナと名乗った。
コオロギの鳴き声が聞こえる。挨拶が済むと誰もしゃべらなくなった。都会では当たり前の話し声や車の音は、この辺りにはない。突然パチッという音がした。
「さっきから蚊が」
首元を掻きながらカーディガンの女性が言うと、KKが地面に置いていたボストンバッグを手にした。
「中に入りましょう」
KKが建物のドアを開け、参加者たちも後に続く。明かりはKKの持つペンライトだけで、すぐにまたドアを開けて部屋に入ったので、建物の構造を把握することはできなかった。
床にボストンバッグを置く。ファスナーを開き、中からアンティーク調のランプを取り出した。スイッチを入れ、ようやく暗闇から解放される。
部屋は縦横が約十メートルの正方形で、物は何もない。左右は壁で、奥に窓が四枚並んでいる。次はブルーシートが出てきて、参加者たちも手伝いながら床に広げた。
靴を履いたまま5人が腰を下ろす。みんなでランプを囲む感じは、星空の下であればキャンプだ。緊張が解けた部分と解けていない部分で複雑な空気になる。
「では予定の時刻、午後11時になりましたので始めたいと思います」
腕時計を見て、ゆっくりとした口調でKKが告げた。
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