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「なるべく人のいないルートで来てもらったのですが、誰にも見つからなかったですか?」
確認することのできない質問に、参加者たちは軽く頷いて答える。
「ケータイは解約してきましたか?」
また軽く頷いていくが、ココナが小さく手を上げた。
「親に言い出せなくて……」
「持ってきたのですか?」
「家に置いてきた」
「なら問題ないです。途中で気が変わって、助けを呼んだりしないようにということですので」
Tシャツが透けてブラジャーが見え、ココナから椥辻が視線を外すと、カーディガンの女性が自分を見ていることに気づいた。目が合いそうになると彼女は顔を背けた。
KKがボストンバッグに手を入れる。次は七輪が出てきた。不思議そうにゆーたが見つめる。
「今からバーベキューっすか?」
「これで死ぬのですよ」
「どうやってっすか?」
「一酸化炭素が出るのです」
「二酸化炭素?」
「一酸化です」
「……楽に死ねるんっすか?」
「はい、楽です」
最後の質問にはKKは笑みを見せて答えた。一方のゆーたは理解していない表情をしている。
「まだ来てない人がいるんじゃないか?」
今の5人が揃ってすぐに建物に入らなかったことを根拠に椥辻が言った。
「あと1人いるのですが、もう予定の時刻ですので……」
「途中で来られたら面倒だと思うけど」
「……そうですね。分かりました、少し待つことにしましょう」
正座していたKKは姿勢を整え、膝の上で手を重ねた。
「死のうと思った理由は?」
続けて椥辻が言った。視線が誰にも向いていなかったので、答える者はいなかった。
「ボクから。ボクの父親は有名な居酒屋チェーンで、店長として働いてた。ある日、仕事中に倒れ、救急車で運ばれて、そのまま亡くなった。半年間、休みは一度もなかったって後から聞いた」
「訴えなかったんっすか?」
ゆーたが尋ねた。
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