ネット心中殺人事件

4/19
126人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「なるべく人のいないルートで来てもらったのですが、誰にも見つからなかったですか?」  確認することのできない質問に、参加者たちは軽く頷いて答える。 「ケータイは解約してきましたか?」  また軽く頷いていくが、ココナが小さく手を上げた。 「親に言い出せなくて……」 「持ってきたのですか?」 「家に置いてきた」 「なら問題ないです。途中で気が変わって、助けを呼んだりしないようにということですので」  Tシャツが透けてブラジャーが見え、ココナから椥辻が視線を外すと、カーディガンの女性が自分を見ていることに気づいた。目が合いそうになると彼女は顔を背けた。  KKがボストンバッグに手を入れる。次は七輪が出てきた。不思議そうにゆーたが見つめる。 「今からバーベキューっすか?」 「これで死ぬのですよ」 「どうやってっすか?」 「一酸化炭素が出るのです」 「二酸化炭素?」 「一酸化です」 「……楽に死ねるんっすか?」 「はい、楽です」  最後の質問にはKKは笑みを見せて答えた。一方のゆーたは理解していない表情をしている。 「まだ来てない人がいるんじゃないか?」  今の5人が揃ってすぐに建物に入らなかったことを根拠に椥辻が言った。 「あと1人いるのですが、もう予定の時刻ですので……」 「途中で来られたら面倒だと思うけど」 「……そうですね。分かりました、少し待つことにしましょう」  正座していたKKは姿勢を整え、膝の上で手を重ねた。 「死のうと思った理由は?」  続けて椥辻が言った。視線が誰にも向いていなかったので、答える者はいなかった。 「ボクから。ボクの父親は有名な居酒屋チェーンで、店長として働いてた。ある日、仕事中に倒れ、救急車で運ばれて、そのまま亡くなった。半年間、休みは一度もなかったって後から聞いた」 「訴えなかったんっすか?」  ゆーたが尋ねた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!