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ビンゴゲームが終わると、辺りはすっかり暗くなっていた。屋台は片付けられ、子供たちは花火で遊び始めていた。
小野たちは竹田社長の親戚にお礼を言った後、再びワゴンに乗り込んだ。
山道を十分ほど進んだ所でウインカーが出る。木の電柱に付けられた電灯が、二階建ての小屋を照らしていた。ワゴンが止まり、竹田社長がサイドブレーキを引く。
「松ヶ崎さん、着きましたよ」
将軍塚が体を揺するが、目を開けない。
「ここで寝てもらえば」
冷たく言い放ってから、石田がハンドバッグを手に車を降りた。
「寝るのはいいけど、吐かれたりしたら……」
困った顔をしながら竹田社長も降り、外からドアを開けた。
「松ヶ崎さん、起きてください」
「うー」
一瞬うなるような声を出したが、やはり目を開かない。
「チッ、仕方ねえ。将軍、おんぶ」
リュックを小野に預け、将軍塚は松ヶ崎を負ぶった。幸い松ヶ崎は小柄だったので重くなかった。
玄関に足を進め、竹田社長が鍵を取り出し、ドアを開ける。入るとすぐにスイッチを押し、中がパッと明るくなった。
一階は中央の奥に階段があり、風呂とトイレ、いくつかソファーの置かれたスペースがあった。靴を脱いでスリッパを履き、竹田社長を先頭に階段を上がっていく。
二階には階段の東西両側に部屋が三つずつ並んでいて、小屋は簡素な間取りの木造の建物だった。
「そっちの奥でいいじゃん」
小野が指した西側の奥に向かって、松ヶ崎を背負った将軍塚が疲れた足を運ぶ。その間に竹田社長、小野、石田の三人は逆の東側に行った。
奥の部屋に着くと、ついてきていた藤森がドアを開け、電気を点けた。鍵はない。
広さは六畳ほどで、ベッドだけが置かれている。毛布とシーツは村人が取り替えていて、そこに松ヶ崎を下ろした。
「ふう……」
「お疲れ様」
藤森が微笑み、将軍塚が苦笑いする。額から汗が滲み、顔を上げた。
「クーラーってないんですか?」
「ないの。ちょっと開けとこうか」
藤森がロックを外して、窓を二十センチほど開けると、網戸を挟んで涼しい空気が流れ込んできた。
寝息を立てる松ヶ崎を尻目に、二人は電気を消して部屋を出た。
トートバッグを持ち、藤森が松ヶ崎の隣の部屋に入ったので、階段の横の部屋しか残っていなかった。将軍塚のリュックはというと、廊下に雑に置かれていた。
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