ネット心中殺人事件

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「いや、危険です。動かない方がいいです」 「じゃあ、このまま何もせず、じっとしとくの?」 「栗本さんが犯人だと決まったわけじゃないです。待ってたら戻ってくるかもしれません」  血が付かないように、椥辻が死んだゆーたの側に座ると、それを見てリホもそっと腰を下ろした。ココナも置いていたハンドバッグの横に屈む。部屋は血の臭いが充満していた。 「七輪の話って本当なの?」  リホが尋ねた。 「本当です。実際に聞くのは車の中とかですよね。あれくらいの広さです。一人なら袋を被ってなんてこともあります」 「そっか……もう一つ、変なこと聞いていい?」 「……」 「なんで、急に敬語になったの?」 「……こっちが普通なんですよ。いちいち使い分けるのめんどくさくなりまして」 「染まるの早すぎ……」  リホの体が震え、急に頭を抱えた。 「入力した後に『これで大丈夫ですか?』って聞いたじゃない……『自分で責任を持って判断して』って言うから、私はやっただけ。みんなだって分からなくなることあるのに、なんで私だけ悪者に……」  一人でつぶやきながら目に涙が溜まっていく。すると椥辻はポケットから缶コーヒーを取り出した。 「飲んで」  受け取ったリホはふたを開け、口の中に注ぐ。 「二人はどういう関係?」  不思議そうにココナが尋ねた。 「小学校の同級生……らしいです」 「らしいって?」 「ボクは覚えてなかったんですけど、たまたまここで会って……」  次はリホに尋ねる。 「さっき何の話してたの?」 「仕事のこと。あなたは高校生?」 「そうだけど」 「まだそういう経験ないよね。社会に出ると大変なの」 「……」 「ココナさんは、なんで死にたいと思ってるの?」 「えっ、イジメに遭って、それで……」  言っている途中でうつむき、リホは深堀りしなかった。 「寒くない? 良かったら私のカーディガン……」 「大丈夫」  そっけない返事に、リホはカーディガンを持つ手を離した。
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