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沈黙が訪れる。時々リホがドアに目を向けるが、誰も入ってこなかった。部屋の中を照らすアンティーク調のライトが場違いに見える。傷ついた新しい死体が放置されている状態は、どう考えても異常な光景だ。
「……もう私たち3人で死なない?」
沈黙を破り、ココナが提案した。
「どうやって?」
リホが聞き返す。
「どうやってって、練炭は無理なのよね。主催者が戻ってきたところで、他の方法を考えるんだから……」
「死ぬのを考え直す気はないですか?」
椥辻が尋ねると、ココナは目を逸らして「今さら」とつぶやいた。リホが椥辻の方を向く。
「トイレ行きたいんだけど……」
「私がついていくわ」
ハンドバッグを手にココナが立ち上がった。
「椥辻くんはどうする?」
「ボクはここに残ります」
「えっ、大丈夫?」
椥辻はゆーたの死体に目を向けた。
「ボクが一人になれば犯人も動き出すかもしれません。そうすれば誰が犯人か分かるはずです」
「そんなの危ないよ……」
「大丈夫です。ボクも男ですので。そっちも気をつけてください」
「分かった。済んだらすぐに戻るから」
二人が部屋を出て、廊下を歩き出す。隣の部屋が目に入ると、中の様子が気になったが、犯人が隠れているかもしれないという恐怖心が勝り、リホは足を止めずに進んだ。暗闇の中、すぐに突き当たりの壁に来る。
「電気はないの?」
そう言いながら振り向くと、急に目の前が明るくなった。ココナが小さな懐中電灯を持っていた。
「そんな便利な物あるんだ……」
「ここよ」
ドアに光が当てられ、リホが開ける。個室が二つあった。手前から中を見る。剥がれたタイルと変色した和式の便器に気分が萎えた。奥の個室に足を進める。
「えっ!」
「……どうしたの?」
「だ、誰かいる」
「誰?」
「照らしてみて」
もう一度、リホが恐る恐る近づく。すると個室の隅で銀髪の女性が体を丸めて倒れ、着ている白い服は赤く染まっていた。
「……主催者?」
KKだと分かったリホがつぶやいた。
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