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「将軍、殺人ってマジで言ってんのか?」
小野が苛立ち気味で聞くと、松ヶ崎の横に屈んでいた将軍塚が立ち上がった。
「頭には何かで殴られたと思われる跡が二ヶ所あります。仮に落ちた時に石か何かで打ったとしたなら、跡が付くのは一ヶ所だけです」
「……」
「それに意識のある状態で、二階の高さから落ちて死ぬ可能性は低いでしょう」
「ここで誰かに殴られたとか考えられへん?」
竹田社長が尋ねると、将軍塚は視線を松ヶ崎の足に向けた。
「松ヶ崎さんは靴を履いてません。首の骨が折れてますので、頭から落ちたのでしょう」
「そやな……部屋の電気も点いてるし」
「電気を点けたのはボクです。元々は点いていませんでした。消すと暗くて見えないと思いましたので」
「あっ、石田さん」
小野の声に二人が振り向くと、パジャマ姿の石田がいた。
「外から話し声がうるさいと思ったら……えっ、それ、松ヶ崎さん?」
「ああ……」
竹田社長が苦しそうに答えた。
「まさか、本当に?」
そう言いながら視線が小野に向く。
「俺じゃねえって!」
不穏な空気が漂い、しばらく沈黙が続いた。
「……社長、藤森さんにも伝えてきます」
「分かった、頼む」
立ち尽くす三人に背を向け、将軍塚はこの場を離れた。
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