社員旅行殺人事件

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 ドアをノックすると、すぐに返事が聞こえた。中からドアが開き、藤森が姿を見せる。その表情からは昼間と変わらない活力が見えた。 「こんな夜にどうしたの?」 「驚かないで聞いてください」 「内容によるけど……」 「外で、松ヶ崎さんが倒れて、死んでました」 「ええっ!」  藤森が両手で口元を押さえる。 「それで、その話になるんですけど……」 「中でもいいよ」  促されて部屋の中に入り、将軍塚はドアを閉めた。 「外から声がしてたけど、みんな集まってたの?」 「はい、藤森さん以外は来てました」 「そう……」  ベッドに藤森が腰を置く。他に座る場所がなかったので、将軍塚もベッドの隅にそっと腰掛けた。 「松ヶ崎さんは、なんで死んだの?」 「ボクの推理になるんですが、何かで殴られた後、窓から落とされて死んだと思います」 「誰がそんなこと?」 「社長は玄関の鍵を掛けてましたし、外から入ってきたとは考えにくいですね」 「……私たちの中に犯人がいるって言うの?」 「警察は呼んでないみたいですし、今自首したら罪も軽くなるんじゃないですか?」  藤森が将軍塚に鋭い視線を向ける。 「私がやったって言いたいの?」 「そうとは言ってませんけど、一番怪しいのは……」 「誰?」 「ボクです」 「えっ?」 「第一発見者はボクです。警察に疑われるのはボクです」 「ちょっと何言ってんのか……」 「けど、ボクが犯人じゃないのは、ボクが一番よく知ってます」 「……こうは考えられない?」  将軍塚が耳を傾ける。 「この小屋のどこかに、私たちが来る前に犯人が隠れてて、松ヶ崎さんを殺して逃げてったとか」 「ないとは言い切れないです」  藤森の説を二重否定で肯定した。 「一階も含めて、もう一度調べに行ってきます。もしかしたら……」 「もしかしたら何?」 「犯人の使った凶器が見つかるかもしれないので」  藤森の目が泳ぎ、顔を背ける。将軍塚はベッドから腰を上げ、部屋を出ていった。
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