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「諦めてくださいよ~」
幸太郎が振り向き、困ったように頬をかりかりと掻いて笑ってみせる。
これでどうだと両手を胸の前に上げて「降参」のポーズをしてみるも、ピンクベージュ髪の女性はそれを逆に嬉しがり、鼻息を荒くしながら自分の胸の前でガッツポーズを作ってみせた。
「あたし、粘り強さには定評があるんだから!」
「発揮するのは今じゃない!」
間髪入れずツッコミをしても、相手がボケている自覚がないのなら、それはツッコミとして作用しない。
「お願いだから諦めてください!これじゃ!俺が!悪い男みたいでしょうが!!」
「そんなことないよ、幸太郎くんは素敵だよ!」
これじゃあいつまで経っても埒が明かない。
あーとかうーとか言葉にならない声を口の中で何度も繰り返しながら、幸太郎は汗ばんだ頭をガシガシと掻き毟った。
「そこの是正を求めてんじゃねーんだよ!あーもー!人の話を聞いてくれェェ!」
悲痛な叫びが、太陽のまだ高い青空に吸い込まれていった。
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