冷たい夜風の中で

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おかえり。 実家以外の場所で言われるその言葉に、幸太郎の胸はいつの間にかじんわりとあたたかくなっていた。 さっきまでの暗い顔を駅の構内に忘れて来た幸太郎は、嬉しそうにはにかみながら自分の両手を擦り合わせる。 先を歩いていく柴沢に今振り向かれたら、にまにまとしただらしない顔が見られてしまう。 けれどどうしても嬉しい笑みが抑えきれない、そんな葛藤を抱えたような表情をしながら、幸太郎はもぞもぞと唇を噛み締めた。 「全く、だらしない顔しやがって」 幸太郎の方を振り向きもせず、柴沢が歩きながらくすりと笑う。 「え?!」 こちらを一切見ずに言われたその一言に、幸太郎は目を丸くした。 「な、何でわかるんだよ、しちゃダメなのかよ」 「へぇ、やっぱりしてたのか」 「何ッ…バカ」 肩を小さく揺らしながら楽しそうにする柴沢に、幸太郎は目元を赤くしながら口をわなわなさせた。
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