おじいちゃんの昔話。

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写真家を目指す藤堂清隆にとって、昼と夜の間は、一日のうちで最も好きな時間帯だった。昼が終わりを告げて夜の帳が徐々にその勢力を拡大していく様を、立体駐車場から撮影するのが、ここ最近の清隆のお気に入りだった。昼が息を引き取って、夜が息を吹き返すこの僅かな時間を、小さな四角に切り取ることに、無上の喜びを感じていた。 もっと良い場所はないか、と歩いていると、高層集合住宅と高層集合住宅の間から覗く夕日が綺麗な場所を見つけて、カメラを構えると…。 「……!!」 レンズには、今まさに、屈強な男が女性を殺そうとしているところが写った。  数日後、清隆は警察署に招かれ、警察署長から感謝状を手渡されていた。 「事件の迅速な解決に多大なる貢献して下さり、心より感謝申し上げます」 「有難うございます」 2人は握手を交わした。  感謝状贈呈式の後、清隆はマスコミから請われて記者会見に臨んでいた。清隆はそこで、記者に請われて愛用しているカメラのメモリーカードに記憶された無数の写真を公開した。
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